小早川武史さん(豊根村)

豊学研

養殖技術における事業承継で豊根村を活性化

2022年、豊根村が水産業の振興を目的に2012年度より養殖を始めたチョウザメから初めての卵が獲れ、世界三大珍味「キャビア」の生産が開始されたことで、豊根村の新しい特産品誕生に期待が高まっている。チョウザメは魚肉として販売できるまでに約3年、キャビアになる卵を持つまでに約10年の生育期間がかかると言われる。その豊根村のチョウザメ養殖の未来や、田舎での暮らし方・新しい働き方の多様性が語られる時、必ずやメディアで紹介される人物が小早川さんだ。それほど多方面からの期待が大きいということだ。

小早川さんは愛知県名古屋市出身だが、東京の大学に通っていた3年生の時、就職活動していく中でチョウザメ養殖事業に関わる活動をする「豊根村地域おこし協力隊」のことを知り、大学在学中の2019年に豊根村へ。学業の傍ら、地域おこし協力隊の活動をスタートさせた。以来、チョウザメをはじめとした淡水魚の養殖や販売に携わっている。地域おこし協力隊在任中は㈱トヨネフィッシュファーマーズの熊谷氏に師事し、生存率や成長率を上げる養殖技術や人工ふ化の技術、チョウザメの雌雄判別方法などを学ぶ。任期満了となった2022年には、引き続き豊根村に残って養殖事業に従事することを決め独立。現在、村が新設した養殖場を借り、地域おこし協力隊1年目の時から養殖している4歳のチョウザメを筆頭に、約2,000匹のチョウザメの稚魚や幼魚の養殖と約30,000匹のアマゴの養殖に励んでいる。小早川さんは6年後からのキャビアの生産を見据えながら、それまではチョウザメの雄の切り身やアマゴの販売を通し、安心安全な高い養殖技術の習得と確立に努め、豊根村の水産業持続のための養殖技術の継承を担っていくつもりだ。

「豊根村は豊かな森林環境に恵まれ湧き水が豊富です。清らかな水資源を使うかけ流し養殖は身や卵にも臭いがつきにくく脂の乗った商品ができます。またチョウザメもアマゴも豊根村でふ化した個体のため奇形が出にくいうえ、病気も出にくく薬を使う可能性も低くなり安心して食すことができるなど、豊根村産としてのブランド価値を高めることは充分にできると考えています。しかし、養殖は天候に左右されたり、特にチョウザメはキャビアとして販売できるまでには年月を要するため、事業として成功させるには厳しい面も。そのため村内の養殖事業者は後継者不足が実情です。自分が養殖事業に取り組むことで、地域内外の若い世代に向けて豊根村の養殖産業の魅力を発信し、豊根村の将来の担い手の確保に繋げたい」と小早川さん。「移住するだけが地域の活性化じゃない。役割地域の人の力を借りながら、自分に与えられた役割で地域を盛り上げたい」と思っている。

また小早川さんには養殖技術の承継のほか、2020年に開業した学習塾『豊学研』で、豊根村の中学生に学校とはまた違った方法での学びの楽しさを伝える役割も。地域の人々の期待に応えようと今日も奮闘している小早川さんだ。

 

『豊学研』

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