土本自転舎/SALT WORKS
豊田市山間部をアウトドアで盛り上げたい!
土本隆雄さんが豊田市稲武地区に移住してきたのは2018年のこと。稲武に本社を置くトヨタケ工業㈱が仕掛ける地域活性化プロジェクト「INABU BASE PROJECT」が転機となった。そのプロジェクトは、山林豊富な稲武の地の利をいかし、マウンテンバイク専用のトレイルコースや遊び場を造成することで観光の集客を図ると共に、そこに従事する人材はトヨタケ工業の従業員として1週間のうち3日は会社で働き、2日はマウンテンバイクのツアーガイドとしての仕事、そして残りの2日は休日という新しい働き方を提案するもの。当時、愛知県尾張旭市で自転車店に勤務していた土本さんはこのプロジェクトに魅力を感じ参画した。
子どもの頃から自転車が大好きだったという土本さん。はじめて与えてもらった中古の自転車に夢中になり、乗ることはもちろん、自分で整備や修理する楽しさにもハマっていったという。大人になり選んだ職業は、当然、自転車に関わる仕事だった。それまでに蓄えてきたメカニックのスキルをはじめ、自転車に関する知識は「INABU BASE PROJECT」でも多いに発揮されたが、土本さんは次のステージに進むべく、トヨタケ工業㈱を退社し、2020年、稲武で「土本自転舎」を開業。主にスポーツサイクルの販売の他、稲武を拠点としたサイクリングイベントの企画やマウンテンバイク専用コース「あけび沢パンプトラック」の造成・運営をおこなってきた。
「稲武にIターンして来て丸4年が経ち、その間に結婚し子どもも生まれました。稲武への愛着はどんどん大きくなるばかり。これからの稲武を担う一員として、自分の特技を使い、稲武を盛り上げていきたい」と土本さんは話す。そんな思いから生まれたのが「土本自転舎」の新たな取り組みだ。「豊田市山間地を走る国道153号線沿いは日本のアウトドアフィールドとしての可能性があり、近郊での気軽なアウトドアを好む日本人の志向と相性が良いと考えています。稲武をはじめこの地域は自転車関係の事業者やキャンプ場、飲食店なども多いですが、個々で誘客を図っている現状です。これをそれぞれの事業者が連携して誘客できるシステムづくりをすることで、各事業者が共に地域を盛り上げていくことに貢献できると思います。例えば、サイクリストは自転車を車載して目的地へ行き、駐車場に車を停めて自転車を楽しむ“パーク&サイクルライド”を実践している人も少なくないですが、実際、どこに車を駐車していいかわからない、などと言った声もよく聞くので、協議会などを立ち上げ、駐車場や飲食・宿泊施設、給水ポイントなどを掲載した地域マップを作成したり、パーク&サイクルライドの試行イベントを開催したりできないかと構想しています」。
また土本さんは2022年、ハンドメイドバックブランド「SALT WORKS」を立ち上げ、稲武という近郊型アウトドアに適した地で暮らす自転車屋だからこその視点でデザインするバッグの企画・販売をスタートさせた。世の中にアウトドア用のバックは多々販売されているが、土本さんは「案外、日本人志向の近郊型アウトドアに最適なバッグは少ない」と言う。「SALT WORKS」では、普段着にも馴染むシンプルな形状とデザインでありながらも、土本さん自身の経験と稲武でのフィールドテストを反映し、機能性と利便性を追求した日本のアウトドアシーンに適したバッグを提案していくつもりだ。さらに自転車屋という強みをいかし、さまざまな形状のハンドルに合わせて特殊設計するハンドル専用のバッグも考案する。
こうした「土本自転舎」と「SALT WORKS」の事業を通じ、豊田山間部から、近郊型アウトドアに適したフィールドと製品をアピールすることで、稲武および豊田山間部へアウトドア愛好家を呼び込み、より多くの集客で地域の活性化につなげていくことが土本さんの狙いである。ちなみに「SALT WORKS」は153号線が“塩の道”と呼ばれることに由来する。目指すは“稲武にSALT WORKSあり”と言われるほどの地域発ブランドに成長することだ。
『土本自転舎/SALT WORKS』